「今村記念コロキウム」について
2010年、当会の一般社団法人としての再出発にあたり、今村和男氏(現理事、2010年当時は代表理事)は、市ノ瀬愼一氏(当会研究会員)に氏の専門分野である現代物理学の現状の紹介並びに「人間とは何か」という根源的問題に物理学の立場から挑戦してほしい旨を要請されました。
爾来、2010年10月より2014年12月までの4年の歳月を経て、今村氏の要請は「現代物理学から見た宇宙創成と人間存在」という主題の研究発表として結実しました。日本人間学会会報No. 16(2016年12月)の論考「コペンハーゲンの霧の彼方に明けゆく次元」は科学と哲学のあるべき姿のエッセンスを抜き出したものであり、市ノ瀬氏の4年にわたる研究の決算報告書と言えるものです。それは、まさしく当会創設者・故高島博氏が「私どもは、各分野の専門家の方々とともに、専門諸科学のみでは説明し尽くせない人間存在の問題を、『人間学』という『学際的』な場において、それぞれ共通の問題つまり人間の『精神』を語り研究しあう『人間学会』なるものの誕生を見るにいたったのである。」と書き残した日本人間学会の創設趣旨に沿うものでした。
これまで科学は、精神の研究についてどうしても及び腰になりがちでした。とくに物理学者がその分野を扱うことには、相当な抵抗があったのではないでしょうか。しかし物理学を専門としてきた今村氏は、あえてその課題に取り組むことがご自身の人生の命題であると明言してきました。同じ物理学の道を志した学兄弟である両氏の間に育まれた学問上の交流をより普遍化するためにも、市ノ瀬氏は「人間とは何か」を継続的に発表する場を設ける必要性を痛感されました。
当会にはすでに研究会員が単発的に自己の研究を発表するための「月例研究会」という場が設けられています。今村氏のこれまでの長年にわたる当会への功績を称えて、新たな研究発表の場は「今村記念コロキウム」として長く記憶に留めることが相応しいものと考えられます。新たに設ける場は単発的ではなく長期間に渡るシリーズ研究の発表の場となるものです。これからの当会の方針は会員の研究発表の場を単発的な「月例研究会」と不定期かつ長期間に渡るシリーズ研究発表の「今村記念コロキウム」の二本立てとし、二つの研究発表の場を棲み分け、かつ有機的に結合させて運営してゆくこととしました。
以上の趣旨により当会としては、創設者・高島氏の「人間の精神を学際的に語り合う」という願いを受け継いでいる今村氏の意思が研究活動に反映されることを願い、また、「宗教と科学の調和」と「精神と物質の和合」という最重要課題に明確な回答をもたらすことを目的として、新たに「今村記念コロキュウム」を創設するに至りました。