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新型コロナウイルスとどう向き合うか  第1回

昨年(2019年)11月 中国湖北省武漢市より発生した新型コロナウイルスの感染に ...

新型コロナウイルスとどう向き合うか  第1回

昨年(2019年)11月 中国湖北省武漢市より発生した新型コロナウイルスの感染によって引き起こされる急性呼吸器疾患(COVID-19)はパンデミックにより、世界が根本的な変化を強いられ、1年経過した2020年11月現在、未だ終息が見えておりません。

そんな中で、このほど、国内外の研究者が急ピッチで蓄積した科学的知見の膨大な情報を分析し、このウイルスに対して世界が協力して戦うための指針を示した書籍「新型コロナウイルスとどう向き合うか——科学的事実に基づくポストコロナ時代への道筋」(昭和堂)が刊行されました。

著者であり当学会会員である崎谷満先生(京都大学医学博士 CCC研究所所長)のご厚意により、この本の内容を定期的にHP上でご紹介する運びとなりました。

新型コロナウイルスにどう向きあうか

 

新型コロナウイルスとどう向き合うか

—–科学的事実に基づくポストコロナ時代への道筋—–

はしがき

新型コロナウイルスは中国から全世界へ感染が拡大し甚大な被害を生じ続けています。最初に感染爆 発に見舞われた武漢では多大な医療犠牲者を出しながら、この新たな感染症と戦っいました。

アイ・フェン 医師¹の記録²によると、2019年12月には武漢で、後に新型コロナウイルスと判明する難治性肺炎患者のクラスター³の発症が確認されました。しかし適切な医学情報の伝達ができなかったため、その過程で眼科医李文亮医師⁴は不幸にもその犠牲となってしまいました。

このような過酷な状況にあっても、多数の中国の科学者は使命感に燃え、その原因となる病原体の同定(新型コロナウイルス⁵)とその起源・拡散に関する分子疫学研究を進め、その結果を果敢に公表しました⁶。中国外の研究者達も相次いで参加し⁷、国際的な共同作業の下、新型コロナウイルス感染拡大の経過が医学・分子疫学の科学的分析によって客観的に明らかとなりました。

私は京都大学ウイルス研究所でRNAレトロウイルスである成人T細胞白血病ウイルスの分子腫瘍学的研究⁸に従事していたこともあって、より単純な構造のRNAウイルスである新型コロナウイルス 感染の起源・拡散についての解析を急ぎ済ませました⁹。そうすることで、中国人科学者自身による科学的貢献が情報公開されオープンアクセス可能となっていることを確認し、中国人研究者の科学者としての良心の証を改めて強く感じました。

本稿の目的は、科学的普遍性に基づき¹⁰、このように公開された新型コロナウイルスに関する科学的情報を専門的に分析することで、いまだ拡大を続けている新型コロナウイルス感染症に対して全世界規模で共に戦うためのあり方を示すことにあります。

第一章では新型コロナウイルスの起源を、

第二章 ではその中国から全世界への拡散を、

第三章では新型コロナウイルスの感染経路・検査・ワクチン・ 治療を、

第四章では感染防御を、

第五章ではポストコロナ時代のあり方を、簡潔に示す。

 

新型コロナ ウイルスは全人類にとって共通の敵であるとの認識の下に、全世界が協力して新型コロナウイルス感染の終息とポストコロナレジリエンス¹¹を進めることができるようにと願っていおります。

 

【脚注】

1.アイ・フェン (Ài Fēn 艾芬)

2. アイ (2020).

3. 「小規模患者クラスター (cluster)」にとは感染経路が追えている数人から数十人規模の患者の集団のこと ( 生労働省 )

4. 李文亮 (Lǐ Wénliàng)

5. SARS-CoV-2 (severe acute respiratory syndrome coronavirus 2) あるいは COVID-19 (coronavirus disease 2019)

6. Chan et al. (2020a), Chan et al. (2020b), G uo YR et al. (2020), Lu et al. (2020), Wu F et al. (2020), Yu et al. (2020), Zhang W et al. (2020), Zhou P et al. (2020), Zhu N et al. (2020).

7. Ralph et al. (2020), Riou & Althaus (2020).

8. 私は分子腫瘍学的研究 (Sugamura et al., 1984a, 1984b, 1984c, 1984d; Sakitani et al., 1987; 崎谷, 2011a, 2011b; Sakitani, 2018, 2019, 2020b) だけでなく、恩師である日沼頼夫氏のT細胞白血病ウイルスの分 子疫学研究を分子生物学の立場から補助し (日沼・崎谷, 2003; 崎谷, 2005, 2008a, 2008b, 2009a, 2009b, 2011a; Sakitani, 2016b, 2016c)、その後も臨床腫瘍学・がんサポーティブケア (崎谷, 2011c, 2016, 2018a, 2018b, 2019, 2020; Sakitani, 2015, 2017; Sakitani & Taki, 2015) に関わっている。さらに今回のコロナ禍の 中、臨床医学の現場において適切なアドバイスを提供し、関わっている地域の新型コロナウイルス感染者発症の 阻止に協力してきている。

9. Sakitani (2020a).

10. 政治的バイアスを避け、中立を保つことも意味する。

11. La résilience (フランス語), resilience (英語) は本来「跳ね返ること」という意味だが転用されて「回復」を意味する。