創設者プロフィール

高島 博(たかしま ひろし)

1912年(大正1年)~1993年(平成5年)
出身地 東京都
医学博士 アメリカロゴセラピー学会理事 ロゴセラピー学会・
カウンセラー養成教官

経歴

1912年(大正1年)   東京都生まれ
            日本大学医学科卒業

1937年(昭和12年)  日本橋高島病院院長
            イタリア大使館名誉医官

1942年(昭和17年)  慶応義塾大学医学部薬理学教室助手
            日本大学医学部内科講師
            東京立正女子短期大学客員教授

1953年(昭和28年)   丸善診療所所長
            林外科病院心療内科嘱託  
            アメリカ・ウイラメット大学教授推薦委員会相談役
1983年(昭和58年)  ソルボンヌ大学客員教授・学位審査委員
1984年(昭和59年)  アラスカ大学哲学客員講師

功 績

1.従病(しょうびょう)主義の提唱

高島氏は40歳代からすでに「従病主義」を発案提唱してきた。
‘従病’‘病に従う’といってもただ単に従うわけではなく、人間らしさの基本をもっと豊かなものと捉える、その考え方を象徴した言葉の意である。病も身のうちと考え、‘無’を肯定的に見る日本の仏教的な考えを含んでいる。加えて、いかなる病にも意味と価値を見いだすことが出来るというウィーンの精神医学者フランクル氏の実存分析(ロゴセラピー)を導入して理論づけた発想であり、実践したものである。従病主義「医学における科学と哲学」というテーマにおいて、ウィーン大学、カリフォルニア大学、メルボルン大学にて講義を実施。

また一方、高島氏は漢方に対する理解も持ち合わせていた。しかし1980年代当時医師の間では、漢方の治療は‘気休め’という感覚が強くあり、容易に理解されることはなかった。今でこそ従病の学説は一般化され、近年は特に高い評価を受け、一部の専門家に留まらず、一般においても健康維持のために従病主義の実践をするところまでに至っている。この観点からも高島氏に先見の明があったといえよう。

2.キュアとケア(治療と看護)

次第に高島氏の従病主義という考え方は看護の分野にも浸透していき、医者のキュア(治療)のみならず、患者の病気回復にはケア(看護)も重要であることをいち早く訴え、医学界に大きな影響を与えることとなった。

人物・エピソード

高島氏は人一倍謙虚で、どんなに難しい学問であっても、いつも小学生にもわかるような表現でジョークを混ぜながら語った。また、的外れの質問に対しても親切に説明を繰り返すという温和な人柄であった。人間に関して幅広い理解をしようとする態度、姿勢を常に示し、良い意味で欲深い人物といえよう。

自身の「人間学」について、「人間学は決して難しい学問ではありません。饅頭が´あん´と´皮´からできているというのが科学であり、饅頭が´うまい´というのが哲学です。それらを合わせたのが人間学です。」という説明の仕方をした。

複雑、詳細なものを単純化するあまり、周囲から注意や指摘を受けることがあったが、単純化することで何より少しでもわかりやすくしようとする高島氏の意図があった。
高島氏の「人間学」は、周囲になかなか理解されなかった経緯があるが、「真の意味で同調してくれたのは、日本医師会会長、世界医師会会長を歴任した武見太郎氏一人である」とよく口にしていた。

故今村和男氏(当学会元代表理事)の国際科学振興財団当時の事務所が高島氏の自宅に近かったこともあり、よく訪ねて来ては時間を忘れて議論を交わした。高島氏と討論した内容には、臓器移植や生命倫理、相撲の心技体を人間学でどう解釈するのか等々多岐にわたった。

日本人で初めて、ヘブライ語でヘブライ大学に論文を発表した人物でもある。歴史を学ぶ必要性も強調し、初期の人類史、聖書にも関心が高かった。イスラエルと深いつながりを持ち、ユダヤ教の影響下にあったイスラエル民族史には特に関心が高かった。人類史を学ぶにあたり、旧約聖書に記述されたイスラエル史を抜きに歴史は語れないとも述べていた。

戦前・戦中・戦後にかけて、高島氏は、人間の心が変り果てていく姿を目の当たりにし、人間の生きがいを追求することの大切さ、また誇り高き人間を豹変させてしまう戦争の恐ろしさから、平和の尊さを痛感したという。

高島氏は他界の前日まで患者の診察にあたり、また息を引き取る直前まで寝言で講演をしていたという。

著作物

▶『生きがい療法(従病(しょうびょう)主義のすすめ)』
祥伝社
1974年(昭和49年) 発行

▶『病む人のために-実存心身医学の立場から』
医学研究社
1975年(昭和50年) 発行

▶『ロゴセラピーと心身医学 -Psychosomatic Medicine and Logotherapy- 』
(アメリカより出版、言語:英語)
1977年(昭和52年) 発行

▶『不養生健康法』
学陽書房
1983年(昭和58年) 発行

▶『軟らかい脳、硬い脳』
学陽書房
1985年(昭和60年) 発行

▶『人間学的心身医学 –Humanistic Psychosomatic Medicine- 』
(アメリカより出版、言語:英語)
1985年(昭和60年) 発行

▶『人間学 医学的アプローチ』
丸善
1989年(平成元年) 発行

▶『人間学への招待』
実践“哲学的人間学”のすすめ
山海堂
1990年(平成2年) 発行

▶『人間学的心身医学 –Humanistic Psychosomatic Medicine- 』
(イスラエルより出版、言語:ヘブライ語)
1992年(平成2年) 発行