新型コロナウイルスにどう向き合うか

2019年11月 中国湖北省武漢市より発生した新型コロナウイルスの感染によって引き起こされる急性呼吸器疾患(COVID-19)はパンデミックにより、世界が根本的な変化を強いられ、1年以上経過した2021年8月現在、未だ終息が見えておりません。

そんな中で、このほど、国内外の研究者が急ピッチで蓄積した科学的知見の膨大な情報を分析し、このウイルスに対して世界が協力して戦うための指針を示した書籍「新型コロナウイルスにどう向き合うか——科学的事実に基づくポストコロナ時代への道筋」(昭和堂)が刊行されました。




著者であり当学会会員である崎谷満先生(京都大学医学博士 CCC研究所所長)のご厚意により、この本の内容をHP上でご紹介する運びとなりました。

新型コロナウイルスにどう向きあうか


新型コロナウイルスにどう向き合うか  第1回

—–科学的事実に基づくポストコロナ時代への道筋—–

はしがき

中国起源のヒト新型コロナウイルスは中国から全世界へ感染が拡大し、現在でも甚大な被害を生じ続けています。最初に感染爆発に見舞われた中国武漢市では多大な医療犠牲者を出しながら、この新たな感染症と戦いました。アイ・フェン医師の記録[1]がその現場の状況を伝えています。このような過酷な状況にあっても、多数の中国の科学者は使命感に燃え、その原因となる病原体の同定 (新型コロナウイルス) とその起源・拡散に関するウイルス分子疫学研究を進め、その結果を果敢に公表しました[2]

私は京都大学ウイルス研究所で RNA レトロウイルスである成人T細胞白血病ウイルスの分子腫瘍学的研究[3]に従事していたこともあって、より単純な構造の RNA ウイルスである新型コロナウイルス感染の起源・拡散についての解析を急ぎ済ませました[4]。そうすることで、中国人科学者自身による科学的貢献が情報公開され誰にもで閲覧できるようになっていることを確認し、中国人研究者の科学者としての良心の証を改めて強く感じました。

本書の目的は、科学的普遍性に基づき、公開された新型コロナウイルスに関する科学的情報を専門的に分析することで、いまだ拡大を続けている新型コロナウイルス感染症に対して全世界規模で共に戦うためのあり方を示すことにあります。

第一章では新型コロナウイルスの起源を、

第二章ではその中国から全世界への拡散を、

第三章では新型コロナウイルスの感染経路・検査・ワクチン・治療を、

第四章では感染防御を、

第五章ではポストコロナ時代のあり方を、

簡潔に示します。

新型コロナウイルスは全人類にとって共通の敵であるとの認識の下に、全世界が協力して新型コロナウイルス感染の終息とポストコロナレジリエンス[5]を進めることができるようにと願っています。

【脚注】

[1]. アイ・フェン (Ài Fēn 艾芬). 中国政府に口封じされた武漢・中国人女性医師の手記. 文藝春秋. 2020;98(5):182-94.

[2]. Lu R, Zhao X, Li J, Niu P, et al. Genomic characterisation and epidemiology of 2019 novel coronavirus: implications for virus origins and receptor binding. Lancet. 2020;295(10224):565074; Zhou P, Yang XL, Wang XG, et al. A pneumonia outbreak associated with a new coronavirus of probable bat origin. Nature. 2020;5779(7798):2770-3.

[3]. 崎谷満. ヒト癌ウイルスと日本人のDNA. 東京, 勉誠出版, 2011;

[4]. Sakitani M. Worldwide expansion of SARS-CoV-2 (COVID-19) of Chinese origin and contribution of Chinese scientists. Vox Propria. 2020a;19:23-36.

[5]. La résilience (フランス語), resilience (英語) は本来「跳ね返ること」という意味ですが、転用されて「回復」を意味します。

新型コロナウイルスにどう向き合うか  第2回

新型コロナウイルスにどう向き合うか  第3回

新型コロナウイルスにどう向き合うか  第4

新型コロナウイルスにどう向き合うか  第5

新型コロナウイルスにどう向き合うか  第6回