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研究会概要

2013年 (平成25年) 

<7月度>
社会 研究テーマ
  「人間はコミュニケーションする葦である」
発表者 浜中 敏幸 (日本人間学会 研究会員)

本研究のタイトルがパスカルの「人間は考える葦である」との名句に因んでいることは言うまでもない。自然の中では風にしなるように弱いが柔軟性や適応力があり容易に屈しない人間の強さは、人間同士のコミュニケーションによる要素が大きく影響しているという研究成果が現代のコミュニケーションの特徴や事情、環境を踏まえて発表された。



本研究は、「デジタル時代のコミュニケーション」、「消費生活とコミュニケーション」、「組織におけるコミュニケーション」の3つの観点から以下の3つのテーマに取り組むものである。

   ① コミュニケーションの本質とは何か。
   ② コミュニケーション上の落とし穴とは何か。
   ③ 人間の本性的欲求とは何か。

現代のコミュニケーションにおける課題として、パソコン、インターネットなどコミュニケーション環境が豊かになっている反面、若者たちを中心にコミュニケーション能力が低下していることがある。

アメリカの心理学者、アルバート・メラビアン(Albert Mehrabian)によるメラビアンの法則によるとコミュニケーションにおいて有効なのは、聴覚的要素38%、視聴覚的要素55%、話の内容7%となっていること、また、会話ができない赤ちゃんと母親の間では、表情、しぐさ、態度により感情を伝え、それを読み取るというコミュニケーションが成立していることなどから、コミュニケーションの成立のためには会話の正確さや能率よりも話し手の情熱、誠実さ、感動の気持ちを伝えることが重要な働きをしていることが分かる。更には、人間は、感動、誠実、情熱、尊重、思いやりなど肯定的な感情に触れることで喜びと共に気分が高揚し希望や生きる力となり行動につながるようになり、ここにコミュニケーションの本質があるというものである。

社会や世界において共通していえることだが、科学、経済学など様々な分野は、人間の感情という不合理的な面を軽視してきた。つまり、これには理論と感情は簡単に相いれないという課題があり、本研究は、このテーマに取り組むことの必要性、重要性を訴えるものとなっている。



 


<4月度>
社会 研究テーマ 「天空の渚をめぐる攻防-
                現代物理学から見た宇宙創成と人間存在(6)」
発表者 市ノ瀬 愼一 (日本人間学会 研究会員)

太陽は荒々しく活発に活動する恒星である。太陽と約1億5000万キロメートルの距離を隔てているとは言え、太陽系深部に位置する地球は、その変動を日々受けずにはおれない。太陽地球環境は太陽がつくりだす惑星間環境と地球がつくりだす地磁気との共同作業によってもたらされるものである。高温のプラズマ状態にある太陽大気では太陽磁場の存在が重要であり、磁場に蓄積されたエネルギーは磁気リコネクション機構を通じて、太陽大気における爆発的な現象(太陽フレアやコロナ質量放出など)を駆動するエネルギーとして放出される。コロナを形成するプラズマの温度は100万Kを越え、その高温のために、常にプラズマが太陽風として惑星間空間に向けて吹き出している。この太陽風は太陽表面の活動に呼応して、激しくその様相を変化させる。具体的には、太陽表面の磁場を太陽圏の果てまで引き出すことによって、太陽風は地球をはじめ固有磁場を持つ惑星に様々な影響を与える。

太陽コロナより流出した太陽風は数日間で地球近傍に達し、地球の強い磁場に遭遇する。プラズマからなる太陽風は地球磁場によって、その進路を曲げられ、地表に直接達することはできないので、地球の周囲には惑星間空間とは物理的性質の異なった地球固有の空間としての磁気圏が形成される。ところが、磁気圏は惑星間空間から完全に独立した空間ではありえず、部分的には惑星間空間と電磁的に結合しているので、絶えず惑星間空間の変化にさらされ、その影響を受けている。とくに、太陽フレアやコロナ質量放出によって発生する衝撃波が地球近傍にまで達したとき、磁気圏は大きく変動し、極域上空ではオーロラが乱舞し、急激な地磁気擾乱が発生する。地球磁気圏で見られる様々な“天空の渚をめぐる攻防”は、太陽磁場と地球磁場の微妙なバランスを保つためにもたらされるものである。すなわち、不機嫌な太陽のもたらす危険から、地球自身が地磁気という身を守るバリアを持つに至ったことは、地球が生命を育む惑星となるための重要な一里塚であった。


 


<2月度>
社会 研究テーマ 「天空の祝福-
                現代物理学から見た宇宙創成と人間存在(5)」
発表者 市ノ瀬 愼一 (日本人間学会 研究会員)

私たちの住む地球、そして太陽系の他の惑星たちは宇宙の中でどのようにして誕生したのであろうか。太陽系は内側から外側へ向かって、地球型(岩石)、木星型(巨大ガス)、天王星型(巨大氷)の3種類に分類され、惑星軌道は同一平面内の太陽を中心とする同心円となっている。また、太陽系では質量は太陽に集中し、角運動量は惑星に集中するという特徴をもっている。このような特徴をもつ太陽系はどのようにして形成されたのか。近年の宇宙化学および比較惑星学の知見を参照しながら、物理的素過程を積み上げることにより、一連の“太陽系創世記”物語を構築することが重要である。そこでは、生命誕生に連なる地球誕生を一種の奇跡と見なす立場に依拠するのではなく、システムとしての太陽系を、分子雲形成から惑星の形成に至る天体進化年表の中に正当に位置づけることが求められる。このことは、原始惑星同士の巨大衝突によってもたらされた地球と月の同時形成という出来事が、“天空の祝福”と呼ぶにふさわしい宇宙創成の一大事件であったことを明確にしていくプロセスであることを意味している。

そもそも太陽系の形成は46億年の歳月をかけて、星間雲(46億年前)→分子雲形成(45.7億年前)→分子雲の収縮(45.67億年前)→CAIの形成(45.66億年前)→コンドリュールの形成(45.65億年前)→微惑星の形成(45.63億年前)→原始惑星の形成(45.58億年前)→惑星の形成(45.5億年前)→月の形成(45億年前)→太陽が主系列星になる(44.7億年前)→現在の太陽系、の順に段階的に作り上げられた。太陽系がおおまかに現在の姿になるのに、ほぼ2千万年の時間(分子雲形成から惑星の形成まで)しかかからなかったということは、太陽系創成過程におけるイベント間の間隔がその起源の年代に近づくにつれて濃縮されていることを示唆する。言い換えれば、太陽系の骨格を素早く作り終えた後の残りの大半の時間を、その肉付けおよび仕上げ作業に費やしていることになる。このことは、地球が形成されていく過程においては、その後に続く生命誕生のための“ゆりかご作り”(プレート形成、大気、海洋)に周到な準備時間を必要としたことを意味しているとも言えるだろう。